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【ステンドグラス探訪03】旧川上貞奴邸(文化のみち二葉館)前編

【ステンドグラス探訪】シリーズの第3弾です。


今回は、旧川上貞奴邸のステンドグラスをご紹介します。結構有名なものですね。


量が多いので3回に分けまして、先ずは前編 - 「踊り子」から。

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SONY DSC-RX1R, 1/100, f/8.0, ISO100, Photo by eto

旧川上貞奴邸

名古屋のこの辺り、は「文化のみち」と名付けられ、大正から昭和初期に立てられた企業家の邸宅などを中心に大正ロマンの香り漂う建物が今も残されています。


それらの建物は、正に和洋折衷そのもの。ステンドグラスも多くの建物に残されています。


その中から今日は、日本人初の女優と言われる川上貞奴と、そのパートナーで電力王と呼ばれた福沢桃介が住んでいた旧川上貞奴邸(現 文化のみち二葉館)をご紹介します。

文化のみち二葉館(ぶんかのみちふたばかん)は、愛知県名古屋市東区にある展示施設。


電力王と呼ばれた福沢桃介と日本の女優第1号である川上貞奴が、1920年(大正9年)から1926年(大正15年)までの6年間を共に暮らした旧邸宅である。


桃介が貞奴と居住するために住宅専門会社「あめりか屋」に依頼し建設されたもので、当時あった場所が東二葉町(現・白壁三丁目)であったことや、和洋折衷建築の斬新な外観やその豪華さから「二葉御殿」と呼ばれていた。

ここには以下の5種類の作品があります。

  • 「踊り子」
  • 「初夏」
  • 「アルプス」
  • 「竜田川」
  • 4つの行灯(あんどん)

この中から、今回は「踊り子」をご紹介します。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO200, Photo by eto

入り口の直ぐ横に早速ステンドグラスが見えます。







踊り子のステンドグラス

建物に入って右側に受付があります。入場料:200円(中学生以下無料)

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SONY DSC-RX1R, 1/100, f/5.6, ISO100, Photo by eto

左側が大広間です。そこの南側に踊り子があります。3人の天女がそれぞれ、竪琴を弾き、タンバリンを持って踊り、そして笛を吹いています。3枚のパネルが、丁度午後の日差しが当たってキラキラと綺麗です。


実はこれ、当時のものではなく、最近になって全くの新規で作られたものです(2004年)。オリジナルは、あの宇野澤ステインド硝子工場が大正時代に製造したものですが、完全に消失。白黒写真を元に復元したのだそうです。


ただ、デザインは可能な限り当時のものに似せてあります。元々のデザインは福沢桃介の義弟にあたる杉浦非水という人です。この人、有名なグラフィックデザイナーで多摩美術大学の初代校長というなかなかの有名人です。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO200, Photo by eto

現代のガラスを使っているだけあって、先ずガラスが綺麗です。


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SONY DSC-RX1R, 1/160, f/5.6, ISO100, Photo by eto

このような、オパールでも微妙な透け感のあるガラスは、おそらく当時はなかったと思います。


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SONY DSC-RX1R, 1/400, f/5.6, ISO100, Photo by eto

西日が眩しいです。行ったのが丁度良い時間でした。この光の具合はこのステンドの魅力が最大限出ていると思います。


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SONY DSC-RX1R, 1/250, f/4.0, ISO100, Photo by eto

顔の表情はガラスに絵付けをしてますね。カッパーフォイルを貼ってその上からハンダ、とかじゃないです。


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SONY DSC-RX1R, 1/400, f/4.0, ISO100, Photo by eto

ガラスは、バックの面積が多いところはサンゴバンのCX、それ以外はほとんどがココモな気がします。ガラスの種類も、当時手に入ったであろう歴史のあるメーカーのものを使っているようで、好感が持てますね


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/4.0, ISO250, Photo by eto

ケイムはフラットを使用して、それぞれ先端を接するケイムの中に差し込んでいます。その上に全面半田。手の込んだ作りです。



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今回は特別な試みとして、全部の詳細画像を載せてみました。サムネイルをクリックすると別窓で拡大します。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/4.0, ISO800, Photo by eto

2階に続く螺旋階段から撮影。せっかくの風情がある建物の、かつ素敵なステンドの前に変なパソコンのモニタが2つ・・。木彫にしてありますが、ちょっと違和感あります。周りの感じや雰囲気も含めたステンドの窓なのに残念です。しかも、ここには写ってませんが、反対側に川上貞奴の説明ビデオが大きな液晶テレビで流れています・・・ orz。






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SONY DSC-RX1R, 1/160, f/5.6, ISO100, Photo by eto

・・・さて、気を取り直して裏側から見てみます。


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SONY DSC-RX1R, 1/250, f/5.6, ISO100, Photo by eto

ケイムの色が結構変色してますね。雨水で酸化したかのようです。今は二重窓になってステンドが守られていますが、以前は違ったからなのかもしれません。


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SONY DSC-RX1R, 1/250, f/5.6, ISO100, Photo by eto


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO100, Photo by eto

でもこういう色は嫌いじゃないです。味があって良い感じ。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO100, Photo by eto


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO320, Photo by eto

補強部分。半田メッキしてあるので、隠れてしまって中の材質は不明ですが、おそらく真鍮かと。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO125, Photo by eto

一枚のパネルに2本、水平に補強が入れられています。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO250, Photo by eto

この辺りはほとんどケイムが変色してないですね。






感想・評価


このステンドグラスの話は、実は「日本のステンドグラス - その歴史と魅力」という本に詳しく話が出ています。(この本、何故かamazonでは売られていない。。)自分は以前読んだことがあって、それで今回ここに立ち寄ってステンドを見て、本のことを思い出しました。


制作は松本ステンドグラス。東京にある有名な老舗の工房ですね。サイトを見てみると、このステンドのことも書かれています。( リンク


何でも、一枚だけ残る当時のステンドの白黒写真を頼りに、頑張って復元したのだそうです。それも結構写りが悪く、踊り子の表情なんかも分からないものです。かつ、部分的には意図的に写真に写るオリジナルのデザインから変えてある箇所もあります。だから、当時のものとは、かなり違うものになっていると思います。


ただ、本にも書かれていますが、当時のガラスより現代のガラスの方が、ガラスが明るく綺麗でテイストも複雑なため、復元した今のものの方が綺麗だとは思います。


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SONY DSC-RX1R, 1/1000, f/4.0, ISO100, Photo by eto

パネルの作りはとても丁寧で、ほぼ非の打ち所がありません。ケイムのライン、ハンダの仕上がり、パテの詰め具合、どれを取っても抜かりがないです。このパネルと同じ部屋に当時のまま残っている別のパネルがありますが、比べ物にならないくらい今の方が丁寧な作りです。


それは、新しい古いの差ではなく、職人の腕や、腕以前の「美意識」の差だと思います。


使っているガラスも、ガラスの模様の方向を考えてきちんと選定されています。真ん中の踊り子の羽衣を見ると良く分かると思います。


ケイムも、ベースは5~6mm幅のもので、一部がもう少し太い8mm~10mmくらいのもの、一番したの菱形が並んだ箇所は3~4mm幅のものが使われており、メリハリが出てます。3~4mm幅という細いケイムは、建築系のステンドでは滅多に見ないです。ガラスの大きさにシビアさが要求されることもあり、制作の難易度が上がりますからね。細いと一見カッパーに見えますが、これはケイムですね。

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SONY DSC-RX1R, 1/125, f/2.8, ISO100, Photo by eto

杉浦非水のデザインも、粗密があって全体のバランスも良く、完成度が高いです。このような写実に近い絵柄のパネルとしては珍しく、建物にマッチしています。絵柄は正に大正ロマンそのものです。


なんか批判的な意見も言いたいところなのですが、、オリジナルを基にした復元作品だということもあり、特にないですね。それでも強いて言えば、竪琴を弾く天女の左腕がないところでしょうか。


あの体制だと、竪琴を弾く左手の先があれだけ見えているならば、腕も少しは見えると思います。右手がもう少し上だったり、竪琴が体側に寄っていれば、見えてなくても違和感がないかもしれません。気になる人は、ほぼいないと思いますが、一旦気になると、そこにしか目がいかなくなります(笑)。




次回は「初夏」をご紹介します。お楽しみに!




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