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【ステンドグラス探訪08】旧井元為三郎邸(文化のみち橦木館)後編

【ステンドグラス探訪】シリーズの第8弾です


前回に引き続き、旧井元為三郎邸のステンドグラスをご紹介します。


本日は最終回、旧応接室のステンドグラスです。

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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/6.3, ISO2500, Photo by eto

旧井元為三郎邸のステンドグラスにまつわる話

この建物のステンドグラスは、全て、正真正銘当時のままのステンドグラスです。それにしては、ちょっと綺麗すぎないか?


そんな声が聞こえてきそうですが、それには秘密が。


ステンドグラスに使われているケイムやハンダの鉛は鉄砲玉の材料になります。当時、戦争で使うために没収・解体され鉄砲玉の材料用に融かされてしまわないよう、館の主人が機転を利かせて一旦すべてのステンドグラスを裏庭の蔵に隠しておいたのだそうです。そしてなんと、それっきり忘れ去られてしまい、戦争が終わっても蔵から出されることがなく、長い月日が流れました。


そして、蔵から「偶然」発見され、再度設置されたのが、2007年! 超最近なんです。暗い蔵の中にずっと入っていて、光を浴びず、誰に触れられることもなかった。だから綺麗なんですね。ググると2006年以前の橦木館の写真が出てきたりしますが、ステンドは今のようには入ってません。


この話、当時、ステンドグラスを大事にされていたご主人の想いが感じられて、ちょっとグッときます。でもわかりますね。大事にしたくなる何かがありますよ。


ちなみに、今ステンドが入っている箇所以外にも、ステンドが入っていたんじゃないか?と思われる個所が、館にはいくつかあります。もしかしたら、他にも作品があったのかもしれませんね。





旧応接室のステンドグラス

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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO2500, Photo by eto

この旧応接室、玄関から入ってすぐ左側にあり、現在は喫茶店として営業されています。


カップルがずっとステンドの前でお茶してたので、近くで見れませんでしたが、ようやく帰られました。いや、プレッシャーは掛けてません、断じて。。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/8.0, ISO4000, Photo by eto

緩やかな止まり木の流れが素敵です。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO1000, Photo by eto

おなじみのハンマード。やっぱり綺麗ですね。止まり木の上の薄い空色の箇所や一番上の白もハンマードです。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO6400, Photo by eto

ちょっと調べたのですが、現在流通しているガラスでは、ウィズマーク社のハンマードが、写真で見る限りそっくりのテクスチャです。ウィズマーク社は1910年の創業だそうなので、これも、もしかしたらウィズマークのかもしれません。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO6400, Photo by eto

主役たち。つがいのムクドリだそうです。下まで縦に伸びる矢羽根模様は何でしょう。鳥の尻尾かと思ってましたが、良く見ると違いますね。この部分、クリアのモールが斜めに使われています。ニクイです。


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SONY DSC-RX1R, 1/60, f/5.6, ISO6400, Photo by eto






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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO3200, -0.3EV, Photo by eto

庭に出て裏側から。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO4000, -0.3EV, Photo by eto


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO3200, -0.3EV, Photo by eto

まだ外は明るいですが、夜は外から見ると、さぞかし綺麗に見えることでしょう。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO5000, -0.3EV, Photo by eto







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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO6400, Photo by eto

中に戻って他の部屋も散策。この建物、和室の方が圧倒的に広いのです。


窓ガラスも当時のものが使われています。少しですが、ユラユラとゆらめいているのがわかりますね。


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SONY DSC-RX1R, 1/60, f/5.6, ISO6400, Photo by eto


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SONY DSC-RX1R, 1/250, f/2.0, ISO100, Photo by eto

照明も素敵です。






感想・評価

例えば日本家屋の障子のように、ステンドグラスに一定のリズム、一定の幅で縦に線が入っていて、リズムが良いです。丁度ステンドの下のガラス窓も障子のように仕切られていて良いリズムになっており、それにより部屋全体に統一感が出ています。例えば、鳥が何匹か自由に飛んでいるような図柄だったら、こうは部屋に馴染まなかったでしょう。


それでいて中央に鳥のつがいを配して、締めるところは締めています。パネル全体の上下のバランスも、鳥の下に矢羽根のようなものを入れることにより、上手くバランスを保ち、程よい緊張感が出ていると思います。


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO3200, Photo by eto


止まり木のなだらかな曲線も良いですし、その上の抽象化して描かれた何かも良いです。何でしょうこれは?上の方の白いのはどうしてもカブに見えてしまいます。この、何だかよくわからないところが良いですよね。想像力をかきたてます。


パネルは全体で見るとシンメトリーですが、堅苦しさはありません。粗密のバランスが良く、デザインが良いです。2階のパネルと同様、ガラスのテクスチャに統一感がありまし、色もブルー系を基本色として上手にまとまっています。


一方でこのパネルはケイムの種類に変化を付けることにより、繊細さ・奥深さが出ています。2階のパネルは全て同じケイムでしたので、作者がデザインに応じて意識的にケイムの太さを変えているのが良く分かります。

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SONY DSC-RX1R, 1/30, f/5.6, ISO6400, -0.3EV, Photo by eto


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SONY DSC-RX1R, 1/80, f/5.6, ISO1600, -0.3EV, Photo by eto


一つ残念なのは、止まり木のところの小さい赤紫のガラスがうまく発色していないことですね。ここがもう少し抜けるように明るく発色していたら、また少し雰囲気が変わったと思います。


ともあれ、今の喫茶店の雰囲気に合った素敵なパネルであることには変わりありません。






当初は旧川上貞奴邸だけを見るつもりで来て、こちらの旧井元為三郎邸は「ついで」でした。しかし、正直、こちらの方が良かったです。


言い忘れましたが、入館料は、一般:200円(旧川上貞奴邸との共通券:320円)です。




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