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【ステンドグラス探訪76】青淵文庫

晩香廬と同じ敷地内にある、青淵文庫という建物のステンドを紹介する。


こちらも中々お目に掛かれない種類のステンドだ。

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SONY DSC-RX1R , 1/100, f/4.0, ISO100, Photo by eto

青淵文庫

晩香廬と同じ敷地内、すぐ隣あるのがこの青淵文庫(せいえんぶんこ)だ。青淵とは渋沢栄一の雅号からきており、文庫は書庫を意味する。晩香廬もそうだが、ネーミングセンスが秀逸だ。


ちなみに、晩香廬の名の由来は「バンガロー」説、「自作の漢詩、菊花晩節香」説、「実父の雅号である晩香」説など、諸説あるらしい。


この建物についても、晩香廬と同様、ステンドグラスも含めて少し前まで全く知らなかった。きっかけは、知り合いの小川三知に詳しい方から、ここのステンドは小川三知がデザインしたものの可能性がある、という話を聞いたことによる。


そんなことも頭の片隅に置きながら、ステンドグラスを見ていこう。

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閲覧室のステンドグラス

こちらは晩香廬と違って大きな建物で、入ると1階にはステンドがある閲覧室以外に、幾つか部屋がある。肝心の書庫は2階だ。

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閲覧室に入ると、いきなり正面にシャンデリアとステンドが現れ、圧倒される。


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ガラスのピース数は、こちらが約1000。


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こっちは約800程。


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ステンドと陶板のタイルが上手く調和している。


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ガラスは、ココモ、ウィズマークのオパールセントグラスがメインで使われており、一部、竜の目などにはキャセドラルグラスが使われている。


ケイムはFHの4/5/8/15mmがが使われている。この大きさのパネルで4mmのケイムが使われることは、あまりない。


また、以前に紹介した旧川上貞奴邸のステンドと同じようなガラスが使われていることに気が付いた。同じ時期に作られ、また制作した工房も同じ宇野澤系であることから、何か繋がりがあるのかもしれない。




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表へまわって、今度はこちら側から。


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表側から見るとケイムのテイストが良く分かる。全面ハンダがやや薄めに施されており、金属の補強がしっかりと、ケイムと同一線上に取り付けられている。また、ケイムの処理にもこだわりが見られる。


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晩香廬もそうだが、合わせガラスが使われておらず、ステンドグラスが外気に直に当たっている。最近の新しい建物では考えられないが、やはりこの方がステンドの魅力が発揮されるなと思う。





階段と書庫

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階段を上って書庫へ向かう。さて、一体どんな本が所蔵されているのだろうか。


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...書庫なのに本がないのは、収蔵予定の本が関東大震災で燃えてしまったからだそう。





感想・評価

今回のステンドグラスも晩香廬と同じく宇野澤組ステンドグラス製作所だと言われている。そして、このステンドは、晩香廬と違って、基本的に創建当時のままで残されている。


資料によると、大竹ステンドが2002年に補修を行ったとの記録があるが、クリーニングとハンダの補強が主であり、組み直されてはいなかった。


この青淵文庫を見て真っ先に思ったのは、建物の主役、「顔」としてステンドグラスが使われている!という点である。一般の目にどう映るかは定かでないが、少なくともステンドグラスを作る側からすれば、この建物はそのように見える。


多くの建物では、ステンドグラスは建材の一部、脇役・引き立て役、添え物に甘んじているが、ここではメインとし扱われている。教会以外でそういった建物には中々お目に掛かれない。

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SONY DSC-RX1R , 1/80, f/4.0, ISO125, Photo by eto

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デザインの特徴として、単純な線を用いないことにより奥深さを出しているのと、こまめにケイムの太さを変えることによりメリハリが出ていること、が挙げられる。


また、一見するとシンメトリーのように見えるが、パネルの左右の帯は登り竜と下り竜、上下の帯でも適度に左右のデザインを変えている。帯より内側のデザインも、中央のシンボルも含めて全て左右の柄が違っており、細かなこだわりが見られる。ちなみに、良く見ると帯より内側は、左上が右下と同一、左下が右上と同一になっている。


中央の図柄は「壽(ことぶき)」と柏の葉を組み合わせた意匠だが、壽などは直ぐにそれと分かるようにはせず、敢えて複雑に紛れ込ませている点が良い。くっきり・はっきりさせない、わざとぼやかす、それによって生まれる奥ゆかしさと艶。


色味については、これだけ多彩な色を使っているにもかかわらず、下品にならず上手くまとまって見える。トーンが同じ感じの、モロに原色ではなく渋く抑えられた色味で、それが全体にバランス良く使われているのと、パネル全体で色の粗密(カラー・モノクロ)のバランスが良いのがその要因なのではないか。


あとは、建物自体もステンドと同じような意匠の陶板タイルが使われており、お互いがお互いを引き立てあって、高い次元で調和が生じている。

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また、特筆すべき点としては、その補強のされ方がある。


建物の内側からは、先ず縦横の帯に、そして格子状の白いガラスと色ガラスの間に、金属でしっかり補強が入っている。特に、曲線でしっかりとケイムの上にだけ施された補強は見事だ。真鍮製だと思われるが、この複雑な曲線上にしっかり真鍮を曲げて這わせるのは至難の業、しかも上下左右対称となれば、少しの乱れが直ぐに目立ってしまう。


加えて、建物の外側からは、縦横の帯に加えて、パネルの中央の小円とそこから出る十字のラインに太い金属の補強が入っている。これだけ補強が綺麗かつ堅牢に入っているステンドは、見たことがない。




この建物も、晩香廬と同じ田辺淳吉が設計を行った。彼は47歳という若さで亡くなっているのだが、もっと長生きされていれば、ステンドを使った建物をもっと多く遺しただろうと考えると、惜しかったな、と思う。彼が設計した他の建物を見ても、ステンドが積極的に入れられている。貴重な存在だ。


最後に、小川三知との関わりについて、


この青淵文庫のステンド、小川三知が作った、新宿にある小笠原伯爵邸のステンドに、デザイン的に通ずるものがなくもないな、と思う。三知がデザインに関わった可能性は、0ではない。


しかし、制作は小川三知ではない、間違いなく。小川三知は、技術的にはこんなに上手ではないからだ。そこだけは、はっきりと言える。

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東京でどのステンドを見に行ったら良いかと聞かれたら、今度からココを挙げることにしよう。聞かれたこと一度もないけれど...。ここ以外でのオススメは、東博、聖路加国際病院などかな。


渋沢家ゆかりの建物でステンドグラスが入っているものとして、もう一つ、誠之堂(せいしどう)というのが埼玉県深谷市にあるらしい。機会があればそちらも是非訪問してみたいと思う。



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